GRAPHITE DESIGN T800インプレ

昨年の乗鞍では、Graphite Designが出店しており、VaxRacingの方によるポジション指導など、有意義なコンテンツを提供していた。というわけで、最も興味があるフレームの一つであるT800に試乗してきた。

印象を一言で述べるなら’しっとり粘る’だろうか。TimeのZXRSをネバネバさせた感じ。 いやRXRSよりもさらに粘り感は強いかもしれない。いわゆるしなる系のフレームだ。どちらかというと、細身だった頃のTimeに近い。
実は、偶然、直前に知人のTime VXRに乗っていたが、これやRavanello S.A.Tにかなり近い乗り味だ。いわゆる高剛性クロモリや細身ラグド高剛性カーボンフレームに結局一番近いかもしれない。

具体的に述べるなら、踏むと踏んだだけ進み、高速でもさらに踏める。そして、その感触はクロモリに近く、とても素直。硬いフレームにありがちな、ある速度域でいきなりぐいぐい進んだり、高速域で脚が足りずにスカスカ抜けてしまう感じはない。
本当に長距離を走ることを想定しているように感じた。これなら100㎞以上走った後にさらにアタックをかけねばならない場面でも、しっかりかかる気がした。ワンデーレースで戦える剛性を持ちながらも、むしろステージレースで真価を発揮するフレームかもしれない。以前GDRの開発者に、毎日100㎞以上練習するプロ選手なら、こういうフレームじゃないと、練習効率がどんどん下がる、という話を聞いたが、言いたい事がよくわかった気がした。 とはいえ忙しいサラリーマンライダーでも、結局次の日に疲れを残さないために、こういうフレームが本来は求められるのではないだろうか。

閑話休題。インプレに戻る。今回の試乗は、上り坂がメインであったが、この感触はおそらく、平地の巡行にも向いているのではないだろうか。一定ペースで踏み回すことができる、丁度良い剛性だと感じた。また、下りも非常にナチュラルなステアフィールで、正確にラインをトレースできた。フォークの出来が非常に良いのだろう。特に、コラムの剛性が高くないと、このような味は出ないはずだが、それにしては、突き上げも少なく、かなり良いカーボンを使っていることが予想できる。
そして、この感触は、恐らく、試乗車についていたステム、”6 OVAL ステム”の影響も大きいと思う。このステムは非常にユニークで、本当にしなる。最初は違和感があったが、慣れるとペダルの動きにシンクロしてくれて、面白い。短・中距離のレースなら、普通のステムの方が、踏むことに集中出来そうだが、長距離のレースだとリラックスでき、かつ衝撃をかなり抑えてくれるから、アドバンテージになるだろう。ステージレースなら、絶対こっちだろう。


フレームに関して要望を述べるなら、サイズ展開位だろうか。でもそれはMETEORシリーズでは問題ないだろうし、恐らくT800からのフィードバックを受けているだろうNew METEORに期待したい。

T800は限定商品だし、このインプレはどちらかというとグラファイトデザインのフレームの方向性を知るうえで参考にする、という使われ方の方が多いだろうから、総括的に述べておくと、ともかくレース・ツーリング問わず、長距離をリラックスして戦ったり、距離を求めて走ったりするとき、最高の相棒になるのではないだろうか。以前Meteor Speedに乗ったこともあるのだが(しかも、今回と同じく、MAVIC コスミックカーボン40C+9000系Dura Aceというパーツ構成)この時はここまで粘り感を感じなかったが、個人的にはT800くらい剛性が高く、粘り感がある方が進むし、進んでいる感があって気持ち良い気がするから、New Meteorには本当に期待している。今後もグラファイトデザインの製品には期待できそうだ。量販が進み価格が安くなったり、はたまたColnago並にサイズ展開が増えたら、買ってしまいそうだ。
また、GDRフレーム全体について述べるなら、例外はあるが、電動は内蔵、機械式は外装、というように整備性を考えてくれているのも、自分で整備する身としては高ポイントだし、リアエンドがガッチリしているのも、レースをする身としては、非常にありがたい。一部を除きISPでないのも、ポジション調整のしやすさや、サドルを頻繁に変えられることを考えれば、とてもありがたい。真面目につくられた、良いフレーム達だと思う。

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