専門分野を分かりやすく伝えるには-最近読んだ本の紹介(4/21追記)

専門分野を専門家ではない人に分かりやすく伝えるのは、困難が伴う。例えば、専門用語等、日常で使わない用語が必要になってくるからだ。特に、理系の分野だと、困難が大きい。

だから、”よく分かる”とか”分かりやすい”とかと銘打たれた本が存在するのだろうが、しかし、あまり満足できないこともある。記述があいまいだったり、本質から外れているのでは、と思うことがあるからだ。どうせなら、専門書を時間をかけて読んだ方が良かったりする。

そんな失礼な前振りをしてしまったが、最近読んだ本で、専門的な内容なのに、非常に理解しやすかった2冊(+1冊)を紹介したい。

まあ、よく考えたら、物理とか数学だと、分かりやすくするために数式を省いたりしていて、なんとなく納得できないことがあるが、生物系の分野だと、言葉で噛み砕いて説明できるから、分かりやすいんだろうな、と思う。

まず、右の眠れなくなる進化論の話」。進化論、というと、チャールズ・ダーウィンの名があまりにも有名だし、その名を思い出す人が多いのではないだろうか。しかし、生物系の話題の中では、注目度は低めであろう。例えば、新種の生物が発見されても、メディアで大きく報じられることは、まれだ。厳密には、それは系統分類の話で、進化の話ではない、と突っ込まれそうであるが、進化論に関するニュースなど、ほとんど聞いたことがない(笑)

しかし、注目度の低さとは裏腹に、今もホットな分野といってよいのではないか。分子生物学の発達、分かりやすく言うと、遺伝子の解析に関する技術の発達などにより、生物の進化は、より明確に分析できるようになってきている。さらに、進化生物学は、系統分類学など、他の生物の分野と結びつくため、非常に重要な分野ともいえる。しかし、中学や高校の理科や生物の教科書を見ても、あまり詳しく書いていないから、専門家以外には、あまり、注目されていないのではあるまいか。もちろん、高校の生物Ⅱなら、系統分類の話を扱っているが。
さらに言えば、専門書も、あまり多くないような気がする(僕の勉強不足か?)。例えば、進化生物学全般を扱っているものとしては、「Evolution(とその邦訳)」くらいしか知らない。もちろん、進化生物学の中の、各分野については、いろいろあるが。

この注目度の低さの理由としては、生物が進化していることの実感がわきづらいことや、生物の分類の大枠など、変わりそうに見えないことなどが、あげられるだろうか。 しかし、昨今の生物学、特に遺伝子に関連する分野の発展で、生物の系統分類と進化が同時に語れるようになり、注目に値する分野ではないだろうか。

さて、またまた前置きが長くなったが、この本は、その”進化学”の歴史と現状を分かりやすく書いている。進化生物学が、今もホットな分野であることがしっかり伝わってくるので、これまで、生物の進化に興味がなかった人にとって、意外な内容かもしれないし、新たな視点を提供してくれるのではないだろうか、と思い紹介した。生物の進化について詳しく書いてある本は、あまりない気がするので(僕のリサーチ不足かもしれないが)、おすすめです。

そして、写真では、その下に写っている、「生物の多様性と進化の驚異」。これも面白い。専門書と読み物の中間のような本で、生物学の専門的内容まで網羅しつつ、系統・分類そして、それと密接にかかわってくる”進化”について述べている。高校で生物Ⅱまで学んでいれば、問題なく読めるレベルだと思うが、そうでない場合は、理解できるところだけ読んでも面白いかと思うし、面白そうなところだけをつまんで読んでも、十分に楽しめると思う。

最後にもう一冊。「脳再生の道」。基本的には脳卒中の話で、目次を見てもらえば、内容が伝わるだろうが、その前半部分で、ヒトの脳に関する最新の知見について詳しく紹介されており、驚いたので、紹介することにした。日常生活が脳に与える影響(例えば、食生活だとか、労働時間だとか、引きこもりだとか、、、)など、興味深い内容が盛りだくさんであった。
(4/21追記)
そしてもう一つ。 この本の後半、脳卒中の症状や対処法、リハビリについての部分を読むと、日本の医療技術の高さに気づかされる。最近、病院に行くのを推奨しないかのようなタイトルの本を多数みるが、確かにそれは、不摂生からくる病気については当てはまるかもしれないが(確かに、予防できるような病気で病院に行くのは、時間とお金の無駄だろう)、もう少し高度な病気に関しては、病院に行くのが一番早く、かつ正確だろう。
因みに、僕自身、昨シーズン、自転車で膝を痛めたとき、病院に行かず、いわゆる代替医療ばかり受けていたせいで、症状を長引かせてしまった。リハビリ科のある病院に行ったら、すぐ直った(その時試した治療法やペダル等のパーツ類について、記事にしてまとめるつもりです)。


とりとめのない書評になってしまったが、興味・関心の対象を広げる一助になれば幸いである。
 

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