ユーラス考②

(前の投稿から続いています)
説明:カンパニョーロ ユーラスのインプレッション 5回シリーズ



[実走インプレ]

インプレッションにふさわしい場所として、半原越えと三増峠を選んでみた。これは、サイクルスポーツ2011年6月号別冊付録「あなたが選んだベストロード」に選ばれていたので、その記事のために、これまで写真を撮ったことがなかった三増峠の写真を撮りに行く、および、前回ホイールを壊した半原越の路面を確認する、という目的があった。

走り始め、リムが軽いためか、確かに踏み出しは軽くなっていたが、別世界、というわけでもない。
そして、早朝のすいている某国道でダッシュ。確かに速度が伸びるが、それ自体はこれまでのホイールと変わらない。しかし、時速50㎞以上を維持するのは明らかに楽。良い意味でのしなりがあるようで、踏んだ力をしっかり変換してくれる。

一方、よくよく神経を研ぎ澄ますと、時速35~40㎞台前半あたりで加速が伸び悩み、コンマ数秒後、ためていた力をはくように加速が伸びていくことが分かった(後述のように、スポークテンションを上げると直線的に速度が伸びるようになった)。

これは、個人的考察だが、”あまり高くない普通のテンション+結線”したホイールと”カンパG3組”では、両方とも縦には良い意味でのしなりがあり、粘るように踏んだ力を推進力に変え、しかも、ねじれ剛性が高いためか、速度が伸びる、という共通点があるのではないだろうか。実のところ、平地では、これまでのホイールと、リムの軽さによる高速域の伸び以外、結構感触が似ている。特に時速35~40㎞位の一旦伸び悩む感じがそっくりである。

話を戻すと、やはりこの高速域の速度維持の楽さは、僕の脚力では一瞬しか感じられないものの、脚力がある人では、平地や緩やかなアップダウンのあるコースで、大きなアドバンテージになるのではないだろうか。やはり、ボーラ人気がいまだ衰えない理由が、なんとなくわかる気がする。個人的には、シャマルやユーラスも、ミッドプロファイルでいいから、もう少しハイトを上げ、かつカーボンにすることで、より軽く、硬くすれば、さらに加速の伸びがよくなるのではないか、と思う(後でもう一度考察)。

一方で、ホビーレース会場でフルクラムの上位ホイールや、キシリウムをよく見かける理由もわからなくもない。確かに、もっと硬ければ、よりスカッとした分かりやすい高性能な味付けになる。しかし、カンパ系ホイールの良さは、そんなに簡単にはわからない味付けといっても良いかもしれない。なんというか、ものすごい高剛性でもないし、めちゃくちゃ軽いわけではない。要はとがりすぎているわけではないからだ。いい意味で、普通に良い。

上りに入ると、既にパンパンになった足では、楽でもなんでもない。1㎏以上軽くなったはずだが、疲れた足では楽にもならない。やはりつらい。しかし、無理してより重いギアを回そうとすると、面白いほどトルクがかかる。さすが、G3組である。絶妙な剛性だ。

さて、次にフロントについて。さすがにここまで軽いと、ハンドリングはシャープになった。ただ、もちろん安定している(安定、不安定はフレームの設計による影響のほうが大きいだろう)。
振動は、スポークが少ないためか、テンションが高すぎないせいか、少しマイルドになった(これまでのホイールはテンションをものすごく上げていて、かつフロント24本だった)。しかし、ホイール全体の剛性は相当に高いはずだ。また、マイルドになったといっても、感覚的なもので、細かい凹凸が続く道では、相当手に振動が来る(これは、インナーチューブをパナレーサーのR-Airから、シュワルベの安いモデルに変えた影響もある)。

また、前後の相乗効果と思われるが、ダンシングは軽快そのもので、かつよく進む。確かにユーラスは普通にいいホイールである。どんなコースでも対応できる、懐の深さがある。今年のモデル間違いなくお買い得だし、ステイタスを求めなければ、非常におすすめできる。

…と肯定的にインプレッションを書いてみたが、素性は良いがノーマル状態の性能で大絶賛するわけにはいかない、と思ったのも事実。その詳しい理由と対処法はユーラス考③で述べる。

〈走行データ〉
走行時間5:09’28
走行距離120.81㎞
平均時速23.4㎞/h
最高速度64.8㎞/h

[整備]
実は、上の走行中、チェーンを3回も落としてしまい、4本もスポークを曲げてしまった。しかし、折れそうな気配はないし、傷がついたスポークもそんなに深い傷ではないから、振れとハブのガタを直して、しばらく使い続けることにした。ものすごく強いスポークである。触れ取りについては次回以降触れるとして、まずはハブについて。

分解は極めて簡単。非常に明快な構造だ。しかも、カンパのホームページにはご丁寧に、動画まである(しかし、各部の締め付けが強めなので注意)。
ベアリングもラチェットもフィニッシュラインのセラミック以上デュラエース以下の粘度のグリスが入っていた(粘度については、自信を持って、この程度と断言できないのでご了承ください。またラチェットのグリスのほうが粘度が高く感じたが、気のせいだろうか)。ラチェットは、手で触った感じもデュラエースのほうが上であったが、分解したところでは、爪の数も少ないし、デュラエースのほうが構造的には良いかもしれない。が、デュラエースの内蔵ラチェットは分解できないから断言できないし、整備性の面では一長一短である(レコードは水が入りやすい、と聞いたことがある)。また、さすがにレコードハブだけあって、ベアリングの回転は極めてよい。

さて、グリスをより粘度が低いフィニッシュラインのセラミックグリス(ラチェット部はデュラエースグリス)に変えてみた。が、例の音はしない。ただ、爪はそんなに硬くなかったから、異常に大きい音はグリス不足ではなかろうか。あと、最初は若干ベアリングがゴリゴリするのは気のせいだろうか。もしかしたら、それなりに粘度が高いグリスのほうがいいかもしれない。

しかし、やはり出来が良いハブであることは間違いない。

(次の投稿に続く)

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