ユーラス考⑤

(前の投稿から続いています)
説明:カンパニョーロ ユーラスのインプレッション 5回シリーズ

残りの2話はこれまでの投稿とかぶる部分が多々ありますので、ご了承ください。

[限界域で見えてきたこと]
自転車のパーツやフレームというものは、限界域になると、さらにその特徴が際立つものも多い。さて、ユーラスはどうか。ヤビツ峠で試してみた。

〈走行データ〉
走行時間4:56'18
走行距離125.50㎞
平均時速25.4㎞/h
最高速度68.6㎞/h
ヤビツタイム40分56秒

基本的に、これまで述べた特徴や美点、欠点と変わらないが、改めてまとめてみよう。

○一番の美点は、苦し紛れのダンシングに答えてくれること
→おそらくG3の絶妙な剛性のおかげだろう
→疲れた時もアシストしてくれる
;しかし、もう少しテンションが低いほうが、走りが軽くなりそうだし(しかし、代わりに反応性が落ちてしまう)、またもう少しパリッとした感じがほしい
→それの両立にはねじれ剛性を上げる必要があるだろう。イメージとしては、ねじれても良いから(おそらくそっちのほうがトルクをかけやすいだろう)戻りを早く(しなりすぎると反応性が悪くなる)みたいな感じ
→2012年モデルの新しいG3組ではおそらく改善されているのではないだろうか
→もしかしたら、カーボンハブもその意味で効果があるのかもしれない(適度なしなりが生まれるのでは。そして、戻りも早いのでは)
→実証するためには、メーカーに聞くか実際に乗る必要があるだろうが、どちらも困難
→しかし、シャマルとユーラスの違いがハブだけということは、そこに何かあるのではなかろうか(重さの違いだけで、そこまで走りが変わるとは思えないから、ほかに何かあるのでは、と考えたい)
;もう少しパリッとした感じを出すには、リムの軽量化も必要かもしれない
→少なくても、シャマルグレードのハブは頑張っているが、やはり、リムの軽量化のほうが大きく影響するだろう。
→一つのやり方としては、素材の剛性アップだが、それは、重量を考えるとカーボン化になってしまうだろう
→すると使い勝手が悪くなる
→理想としては○35㎜ハイトくらいのカーボンリムモデル○現在のシャマルの進化形の併売。僕だったらそれでも後者を選ぶが…(やはりアルミは使い勝手が良い)
←しかし、カンパがミッドプロファイルのカーボンを出さないということは、今のシャマルの性能に自信を持ているということだし、実際、いじったユーラスの性能に僕は非常に満足している。
←また、ユーラスで激坂を上っても、重いホイールによくある、リアが引きずられる感触はない。だから、重量は十分納得できる範囲だが、しかし、さらに軽量化したら最強だろう。
→もう一つの方法としては、MAVICのようなリムの側面の切削だろう
→これらのことから考えると
・リムの軽さ
・リムの剛性
が走りに対し非常に重要な役割を持つと考えられるが、構造上一番有利なのはチューブラーリムのはずだから、もしかしたら”2012年モデルのシャマルのチューブラーモデル”が、使い勝手も考えたとき、最強のカンパホイールなのかもしれない(もちろんシーラント剤が必須だ)。(タイヤの性能を考えなければの話だが、実際最高級のチューブラータイヤなら、チューブレスに十分対抗できるだろう)

一方、フロント関連
○一番うれしかったことは意外と横剛性があったこと
→もう少しスポークを増やしたほうが良いかと思っていたが、そうでもないようだ
→ダンシングでも意外と進んでくれる
→下りのロードインフォメーションも意外と伝わってくる
→微振動を減らすのが課題
←結局
・ロードインフォメーションを増やす
・微振動を減らす
という2つの課題を両立する一番良い方法は
・良いタイヤを使うこと
ではないだろうか。実際、チューブラータイヤかチューブレスタイヤの使用で、それらは両立できるだろうし、クリンチャーならラテックスチューブを使うのが良いのではないだろうか(今回は、コンチネンタルのアタック&フォースにシュワルベとミシュランの安いチューブを組み合わせたため、チューブの影響が非常に大きかったと思われる)。
→また、カップ&コーンベアリングのおかげだろうが、ホイールがどんな角度でも、しっかりハブが回ってくれている感じがして、好感が持てた(現在、グリスはフィニッシュラインのセラミックグリスを使用。なじみが出るとよく回ってくれるが、最初はややゴリゴリした。粘度が高いグリスのほうが相性がよさそう)

[本当のまとめ]
結局”どんなパーツでもいじらなければ性能が出ない”ということを確認する結果になったが、それでも、ユーラスは非常に素性が良いので、誰にでも勧められると思った。リムの硬さ、精度、軽さ、ハブの回転、スポークの粘り強さなどなど、とにかく素直で必要十分の良さだ。耐久性もありそうだから、使い勝手も良い。リペアパーツの充実も良い。

強烈な走りや、乗った瞬間に興奮するホイールがほしい人は、乗ってがっかりするだろうが、特に長距離を走る人や、素直に付き合えるベンチマーク的なホイールがほしい人には、ツボにはまるのではないだろうか。

ただ、もう一度繰り返すと、まったく強烈な走りでもなく、どこかもっさりして存在感はない。乗った瞬間の強烈な変化は期待しないほうが良いだろう。他の人のユーラスのスポークテンションが気になるが、もしかしたら、いじらずに高性能を体験したい場合は、シャマルのほうが良いのかもしれない。

それはともかく、個人的には、大いに気に入ったホイールである。


(その後さらにいじった結果をまとめました→〈よく進むロードバイクにするには―パーツ考 1.続・ユーラス考〉)

(追記)2011/9/26シャマルのスポークテンションについて(2012/2/24さらに追記)
先日、某自転車店に、2011年モデルのシャマルのクリンチャーモデルの在庫があったので、スポークを触らせてもらった。すると、サイクルモードでの記憶と同じく、ユーラスの初期状態よりはテンションが高い気がした(もちろん人間の感覚なので、断定まではできない。しかも、このときはノーマルのユーラスはなかったので比較はしていない)。しかし、少なくとも、リアフリー側約130㎏、リア反フリー側約90㎏でまとめている、僕のユーラスに、相当近いスポークテンションであるように感じたことは確かだ(もう一度、参考までに延べておくと、ノーマルユーラスのテンションは、テンションメーターでは計っていないのだが、感覚的には、リアフリー側が100㎏を切っている感じであった)。


クリンチャーと2-WayFitでテンションを変えている、ということはカンパではあまり考えられないので(シマノと違い、構造がほぼ一緒。リペアパーツ参照。シャマルとユーラスは、タイヤ形式に関わらず、スポークとニップルが一緒。2-WayFitに関しては、リムまで、シャマルとユーラスで共通だ)参考までに追記した。


ただし、タイヤの転がり抵抗が小さいと、スポークテンションが低くても、走りが、軽く感じるのは確かだから、シマノのように、チューブレスモデルだけ、若干テンションを下げている、ということが、考えられないわけではない。

↑よく考えたら個体差の可能性も結構あるし、自分のユーラスのスポークを触った感じが、触る方向(=力を加える方向)を変えることで若干変わることから(おそらくエアロスポークのため)上の記述は信頼性に欠けると思われます。すみません。

○注意 (追記)2011/10/10スポークテンションの値に関する疑問(ユーラス考3,4,5に追記したものはすべて同一の内容です)
最近以下の事実が判明した。
・テンションメーター(Park Tool TM-1)の換算表で本来Alminium Blade 1.5×3.9㎜を見るべきところを、1.8×5.3㎜を見ていた
しかし
・ユーラスのフロントホイールのテンション(まったく調整していない)は、1.8×5.3㎜に従うと、すべてのスポークが約92㎏で、カンパの推奨テンションである70~90㎏と一致する
というのも事実だ。
よって、
・Park Toolの換算表に従うなら、これまでの記事のスポークテンションはすべて誤りで、170㎏以上になる
が、
・カンパのホイールの組み上げ精度を信用するなら、(おそらく)この記事のスポークテンションは大体正しい
と予想される。

どちらが正しいかは、断言しかねるが、僕自身は
・換算表のAlminiumと、カンパのスポークに使われているアルミ合金の剛性が一致しているとは限らないから(アルミは種類によって、硬さが全然違う)、換算表が、必ずしもカンパホイールのスポークに適用されるとは限らない
・そもそも換算表に従うと、リアのフリー側は単純に考えて200㎏以上になり、推奨テンションの上限である150㎏と比較すると、間違えなくありえない(ユーラスは2010年モデルからニップルがアルミ化されているから、最低でもニップルは飛ぶはず)
・カンパホイールの組み上げ精度は相当高い(少なくとも、僕のユーラスは出荷時に縦振れ、横振れともに0だったうえに、テンションもそろっていた)
ということから、この記事に乗せたテンションの値は、あながち間違えではない、という判断をしたが、その判断は、正しいとは言い切れない。よって
・正しいテンションはわからない
ということをご了承ください。

(完)

コメント

匿名 さんのコメント…
長い論文有難うございました
若し私がチューニングするとしたら、時間を掛けたくないので、テンション触らずにソルダリングをすると思いますが、ソルダリングで貴方様の遣られたスポークテンション触ったのと同じような効果あるのでしょうか。普通のタンゼント組のソルダリングの効果は判っているのですが、G3については判りませんので、ご教授のほど宜しくお願いします。
Tomonobu KATO さんの投稿…
コメントありがとうございます。

個人的には、結線の方が、スポークテンションをいじるより、むしろ好印象で、スポークテンションを上げると、反応はいいが、足が負けることがあるホイールになる一方、結線の場合、反応も良く、かつ足も負けないホイールになりました。

ただ、完組ホイールの場合、ストレートスポークなので、構造上、結線はできません。実は、ユーラスでも結線を無理やり行ったところ「http://tomonobu-railway-car.blogspot.jp/2012/02/1_22.html」で述べたように、すぐ、スポークが折れてしまいました。

というわけで、結線は有効なので、G3組にこだわる場合は、諦めざるを得ませんが、こだわらなければ、手組することで、フィーリングが良いホイールを作れると思っております。