よく進むロードバイクにするには―パーツ考 2.フルクラムクランクの真実②

(前の記事から続いています)

[詳細インプレッション]
レーシングトルクRの使用感について、詳しく述べたいと思う。

・変速性能、チェーンリング剛性
シマノユーザーが気にするであろう変速性能。個人的には、気にならないレベルだが、確かにデュラエースなどのストレスフリーな感じになれている人なら、”ダメ”という評価を下すだろう。

変速時にしっかりトルクを抜けば問題ないのだが、何も考えずに変速をすれば、変速できないことはないがFディレーラーを壊すのは必至だろう。まあ、そんなに変速性能を重視するなら、シマノの電動コンポにデュラエースのチェーンリングを組み合わせればいい話。そもそも変速性能最重視の人は、フルクラムのクランクなど、候補にすら入らないだろうが。

チェーンリングの剛性は、デュラエースと比べればやっぱり”ダメ”という評価が下るだろうが、6600系アルテグラSLより圧倒的に剛性が高く(変速しやすく)、変速性能は50×39という最強の105と同等だろう(53×39,52×39,50×34などとは大違いだから注意)。
105 50×39
  正直、これ以上(機械式の)パーツに性能を求めたら、何も考えずに変速できることになるから、パーツを壊すことにつながるのではないか、とすら思ってしまう(以前、あるショップの人が、サイスポの記事で”最近は変速時にトルクを抜かない人が多く、フロント変速機を壊す事例が増えている”という趣旨のことをおっしゃっていたが、確かに、Wレバーを経験せず、いきなりストレスフリーなデュアルコントロールレバーに慣れてしまうと、トルクを抜くことは自然には覚えられないかも知れない。もちろん、何も考えずに変速できるのが機械として理想ではあるが)。

ちなみに、この感覚は、105についてはカンパ10sチェーン(ケンタウル)、アルテグラについては、カンパチェーンとシマノ10sチェーン(アルテグラ6700)、レーシングトルクRについては、アルテグラとカンパ11sチェーン(コーラス)によるものだ。

・Qファクター
これは個人差があるし、ペダルでも変えられる範囲だからあれこれいうことでもないし、シマノのクランクのQファクターを測っていないから、何とも言えないが、若干105やアルテグラSLより狭い気がする(デュラエースは同条件で乗っていないから、何とも言えない)。

僕自身は、耐久性からシマノの安いペダルが気に入っていて、今後もシマノかLOOKしか買わないだろうから、そういった意味では、フルクラムにしてよかったと思っている。シマノのクランクを使っていたときは、若干内股気味になり、足の内側の筋肉が発達してしまい、困っていたからだ。故に、シマノユーザーで気に入ったペダルがあり、かつQファクターがあっていない、という場合にはフルクラムは良い選択肢の一つになるのではないだろうか。変速はトルクを抜けばどうにかなるが、Qファクターが合わない場合は、きれいなペダリングが阻害され、場合によっては体を壊す可能性すらあるからだ。

・BB
以前使っていたデュラエースは一度シールを外して、フィニッシュラインのセラミックグリスを入れていたので、初期状態のフルクラム以上に滑らかに回り、少し、びっくりした(シマノのBBの防水性はものすごいので、それなのにカンパ以上に回るとは、驚異的ですらある)。しかし、2000㎞程度走ってもう一度調べてみたら、同等レベルになっていた。ついでにグリスを入れ替えようと思ったのだが、シールが厚くてかたくて外れない(もともと外すものではないから当然だ(笑)。しかし、シマノは頑張ればとれる)。これは注意が必要だ。下手にいじるとシールを壊しそうなのであきらめた。値段と取り寄せ期間によるが、シールを購入したうえで整備するか、もしくはスーパーレコードを購入するしかないだろう。

一方、噂のねじれ剛性については、クランクアームの違いも含まれるため、BBやクランクシャフト単体での評価はもちろん無理だ。

・クランク
剛性は必要十分。カーボンなので当たりが柔らかいから、剛性感ではシマノとどっちが上、とは言い切れないが(特にデュラエースはチェーンリングが硬いから、クランクアーム単体の剛性については、個人的には良くわからなかった)、少なくとも105と同等以上のアーム剛性といってよいだろう(アルテグラSLはチェーンリングの剛性がそこまでないので、アーム自体の剛性は良くわからない)。

シマノより回しやすく感じるのは、BBなのか、Qファクターなのか、はたまたねじれ剛性なのか?まあ、先入観による気のせいかも知れない。
ともかく、超高剛性というわけではないが、たとえデュラエースからの乗り換えでも、剛性面で後悔することは、あまりないのではなかろうか(チェーンリングの剛性命、とか変速性能命とかいう人は別として、普通に使う分においては、特に長距離を走ることを考えれば、最初仮にやわらかいと感じても、走り終わった後に平均速度が低い、とかそういう結果にはならないのではないだろうか。実験していないから断言できないが)。

微妙な言い方に聞こえるかもしれないが、個人的には剛性がちょうどあっていて、使っていて気持ちよく、気に入った。

(次の記事に続いています)

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