Specialized S-Works Aerofly Ⅱインプレ (2021/1/2追記)

前編がずいぶん長くなってしまったが、本題のSpecialized S-Works Aerofly Ⅱのインプレ。

<組付け偏>
ワイヤー内装の製品というのはフレームにせよハンドルにせよ、組付けの容易さが気になるのではないだろうか。僕自身も、TTバイク用のブルホーンバーで某社の製品がとても組みにくく、ロードでのワイヤー内装ハンドル導入の二の足を踏んでいた(念のための注釈だが、よくある、フラットバー部分の途中に穴が開いているタイプのブルホーンバーである)。
しかし、最近のエアロハンドルは組付けやすさにも配慮しているものも多く、このAerofly Ⅱも例外ではない。
ワイヤーを通す穴が、適切な位置にあり、ワイヤーを通すだけで自然と出てくる。そういえば、Profile designのブルホーンハンドルも同じ作りになっていた(参考までにOzero TTを購入した;モデルによっては違う造りのものもありそうなので念のため)。


恐らく、今のところはAeroflyなどを中心とした、ワイヤーが自然に出てくる位置に穴を作るか、Vision Metron 6Dのようなハンドルの下に溝を作るかのどちらかが最適解なのだろう。
よくあるハンドルの下に穴があるタイプのハンドルだと、場合によってはピンセットのようなもので無理やりワイヤーをつかんで、みたいなことをしないとワイヤーが出てこない場合もあったのであの苦労をしなくてよいと思うだけで大満足である。
そして、もう一点好ましいと思ったのが、滑り止め防止加工の質。これまでも(前編で述べたハンドル以外も含め)複数のカーボンハンドルを扱ったことがあるが、滑りにくさは特筆すべきで、実際、カーボン用の滑り止め防止グリスを使わなくても滑りそうな感じを受けない(もちろん使わないことを推奨しているわけではなく、僕自身も使用しています)。Specializedの開発力の高さを感じた。

<セッティング・形状>
前編でも長々と書いたが、僕はこれまでシャロ―ハンドルが好きだった。シャロ―ハンドルの良さはアグレッシブなポジションが取れる事、下ハンドルで力が入れやすい事だろう。
Aeroflyのようなアナトミックシャロ―だとポジションがアップライトになるかな、とちょっと心配していたが、意外にも、STIレバーの位置が遠くなることもあり、ステム長も角度も変えずにポジションが出た。この辺は個人差があるだろうから、あくまでも参考程度に読んで頂きたい。

問題の下ハンだが、丸ハンドルと比べ、力が入りやすいベクトルが斜め前方向になる、とでもいえばよいのだろうか、丸ハンドルでは下方向の力が入りやすいのに対し、斜め下前方に力が入りやすくなる。その位置に力が入ることで自然とひじが曲がる=自然と空気抵抗が少ないポジションでもがけるようになる、と解釈した。
Specializedを供給されているプロチームの選手はスプリンターすら、丸ハンドルではなくAerofly Ⅱを使っているし、実際それで勝っているわけだが、単純なハンドルの剛性・空気抵抗の少なさだけではなく、ライダーも含めた空気抵抗低減を狙った設計が生きているのではないか、と感じた。
そして、今回、バーテープにはデダのミストラルを使用しているが、もちろん僕の巻き方がそこまで上手ではないというのもあってか、段差ができてしまった。せっかく、バーテープを巻いても空力を悪化させないように段差が作られているので、それに合うように極力薄いバーテープを使用するのが好ましいだろう。

<インプレッション>
・室内編
まずはローラーで使ってみる。第一印象は剛性の高さだった。実は、自分でAeroflyを購入する少し前に知人が”意外とたわむんですよ”と言っていて、確かに彼のVengeについていたAerofly Ⅱは超ガチガチな印象はなかった。なのでこの印象はステムとの組み合わせ、フレームとの組み合わせでも変わる可能性があるが、少なくとも、僕自身のフレームと組み合わせた第一印象は”高剛性なハンドル”であった。
そして室内練で強く感じるのはフラットバー部分の作り込みの良さ。この部分は力をかけても全くたわまず、また汗がついても滑りにくい。平らで肘を置きやすいので、例えばレースで一人逃げをする際に疑似DHポジションを取りたい、といったシチュエーションでかなり良いのではないだろうか。

ブラケット部分や下ハンドルに関しては上に書いたポジション・フォームの考察以上に特筆すべき感触は得られなかった。しいて述べるなら、Growtacのローラーで強くダンシングしても全くたわまず、しっかりもがける、といったところだろうか。

・実走編
実走すると剛性感・振動減衰性・空力など、様々な要素が感じられるわけだが、特に感じたのは剛性の高さと軽さからくると思われる接地感の高さだった。アルミハンドルのような感触で、路面のざらつきまでしっかり伝えてくれる。
空力の良さに関してだが、”なぜかよく分からないけど速い”という感想を持った。恐らく、フォームが変わったことによる空気抵抗低減の影響の方が大きいだろう。というのも当初、ステムをアップライトなものに変えて乗ってみた所ほとんどそのような感じは受けず、いつも通りの水平ステムに変えて(以前よりさらに)アグレッシブなポジションにしてからそのような感じを受けたからだ。とはいえハンドル自体も多少は効いているだろうから、ハンドル単体でも、例えば長距離を走った時やかなりスピードが出ている場面で、気づかない程度にアシストしてくれるくらいの効果はあるのではないだろうか。
振動に関しては結構しっかり伝わってくる。接地感が高いと書いたが、言い方を変えれば衝撃がしっかり伝わってくるという感触。衝撃の角もあまり丸くなっていないが、ハンドルが変にたわんだりしない分、安心感はある。レース機材と考えると個人的にはこういうダイレクト感が高い感触が好きなので気に入った。なお、空気圧を上げると、少し跳ねる感じが出てきてしまうので、その点は注意が必要だろう。
恐らく、フラットバー部分が薄すぎないため、むしろ剛性向上に寄与しているのではないかと思う。実際、実走でのスプリントの際、全力でもがいても全然たわむことなく、グイグイ速度が伸びていく感じがしてとても気持ち良い。
僕自身は体重の軽さもあって接地感(という数値化が難しいよく分からない感触)に悩まされてきたが、その問題も多少解決できたという点でも良かった。
剛性が高いエアロハンドルというのは色々な意味で最強の機材だと感じた。


<サイコン取り付け>
Specialized Vengeの場合、専用ステムを使うことでそちら側にサイコン台座がつくようだが、Aerofly Ⅱ単独での導入の場合、サイコン取り付けに一苦労である。というのも丸い部分の幅が少なく、例えばPioneerのSGX-CA600用の台座であるSGY-BR600は取り付けできなかったし、Rec-mountsSGX6-Narrow9(汎用タイプ)すら装着不可能だった。参考までにだが、僕はSGX6-BOLT17(ボルトクランプタイプ)を使っているが、これかSGX6-SPECER10(ヘッドスペーサータイプ)、SGX6-TOPCAP14(トップキャップタイプ)あたりが選択肢となりうるのではないだろうか。もしくはおとなしく専用ステムを使え、ということだろう。
 
<ステムとの相性について (2021/1/2追記)>
下記の話は個体差もあると思うので、その点も考慮して読んでいただきたい。
Fizik cyranoステムでしばらく運用していたのだが、カーボン用すべり止めグリスを使用しても、段差でハンドルがお辞儀してしまうことがあった。cyranoステムは複数所有しているので、使用頻度が低いもの=あまり消耗していないはずのものも試してみたがそれでも効果はなかった。
次に、取り付け部の幅がより広いステムを試そうと考え、OnebyESU スージーステムを試したら、ステム自体の性能、デザインには全く不満がないものの、やはりお辞儀してしまった。
最終的にVengeステムを使ったところ、そのような症状がみられなくなった。わずかな設計の違いなのだろうが、純正ステムでは段差で滑る症状が完全に消えたので驚いた。なお、Vengeステムは店頭販売のみな点に注意。
ちなみに、その後、ポジションをさらに煮詰めていく段階でS-Works SL Stemに変更したが、こちらでも全く問題はなかった。また、こちらの場合、取り付け部の幅が狭いため、Rec-mountsSGX6-Narrow9(汎用タイプ)を取り付け可能である。軽くて高剛性、角度も6度12度17度から選べバリエーション豊富、と極めて満足度が高い製品であった。

<総括>
結論を述べると、あれだけ丸ハンにこだわっていたのにウソかと思うほど気に入ってしまった。結局、丸ハンという伝統の形状が好まれるのは、長い淘汰を生き延びてきたからということがあるだろうが、要するに、よく考えられた形状であれば丸ハンであっても丸ハンでなくても、競技するうえでメリットになりそう=選手的な目線で気に入る、ということなのだろう。
基本的に定価販売ではあるが、値段相応の性能はあると思うし、ぜひ他の人にも勧めたい製品だと思う。
単純なシルエットでいえばいまだに丸ハンが好きだが、性能面を含めて考えると長く使い続けたいと思えるハンドルであった。今後、ステム一体型など、他のバリエーションが出てくることも期待したい。

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