それまでのメインホイールはユーラス。一時的に中華カーボンやアルテグラなどを使っていた時期もあるが、自分の中での基準はユーラスにおきたい。以前インプレしたが(参考記事①、参考記事②)、貧脚ホビーレーサーだった当時とはだいぶ印象が変わり、”加速後半に伸びる”G3の良さが本当の意味で分かってきて、 結局、決戦用ホイールを買い替えるにあたって、ボーラ以外は検討すらしなかった。
<総括>
結論を言えば、パリパリだけど、G3の深みがある、”好きな人にはこれしかない”フィーリングであった。
ほかのホイールと比べた感じでいえば、キシリウムやレーシングゼロの反応性と、ユーラスやシャマルの様な、踏み込んだ時の脚へのやさしさが両立されている。
リムはものすごく硬いし、スポークテンションもキンキンだが、ステンレススポークらしい、ある種のやさしさがあるのだ。
個人的にはあまり重要視していないが、重量は、F486g, R700gとボーラウルトラ35のカタログ値に迫る軽さだったので、当たり個体だったのだろう。更に言えば、スポークテンションはほぼ均一で、どちらかといえば、その精度の高さの方に驚いた。しかも、2年間で、数千キロ走った状態で、もちろん振れ取りはしていたが、少なくともリアはほとんどテンションが変わっていなかった(フロントは後述の様に自分でいじってしまったので検証できず。なおアナログメーターの為、厳密には分からない)。
<フロントホイール>
特にインプレに困るのがフロントホイール。ボーラにするまで、一度もレース中に落車をしたことがなかったのだが、ボーラにしてから何度も落車をしてしまったのだ。軽いし硬いから、ほかのホイールよりも進んでいる感が強いし、コーナリングスピードも速いが、その割に接地感が劣る気がする。
フレームとの相性なのかもしれないし、特に、フレームが重く、ホイールとクランクが軽いせいで重心が上がっている可能性はあるので、今後、更に自転車の上部のパーツの軽量化を進めたら、この項は書き直す可能性がある、という事を前提に読んでほしい(2017/4/6追記をこの項の下に書きました。低速かつ後ろ乗りでは接地感が乏しく、レーススピードかつしっかり前に荷重をかければ十分な接地感が得られます。とはいえ、マビックホイールなどさらに接地感が強いホイールがあることは間違いないので、インプレ部分はほとんど訂正せずに残しておきます)。
ホイールとしての性能はかなり高く、コーナリングスピードはアルミリムでは到底到達できないことは間違いない、と再度書いておきたい。ダンシングの反応もよく、恐らく横剛性も高いのだろう。とはいえ、自分の限界を超えられるくらいコーナリングスピードが速いせいなのか、それとも重心が高くてフロント荷重が足りないのか、もしくはリムとスポークの硬さに対して、軽量化したハブの剛性が足りていないのか、接地している感触が少ないのだ。
ただ、フォームを変えて、極端なエアロフォームをやめることで、落車自体はなくなったので、重心や荷重の問題には取り組む必要があるだろう(
なお、スポークテンションをいじってみたが、結局標準状態が最も良さそうであった。スポークテンションを下げると、実際のコーナリングスピードと自分の想定速度のギャップは小さくなるが、フィーリングは良くならなかったので、どうせなら標準状態で、コーナリングスピードが自分の想定速度を上回っていたほうが良いと感じた。
ともかく、軽さによって(重心が上がり)フレームとの相性が悪い、という可能性もあるにも拘らず、ボーラワンよりも軽いホイールを自分のフレームに履かせる機会がいまだにないのが悔やまれるが、ひとまず競合他社のホイールとの比較をいくつか書きたい。
まずは、先代のボーラウルトラ35。まぎれもなく高評価の名作といえるだろう。同じタイヤをつけた状態で、何度もコーナーを曲がったが、ボーラウルトラ35の方は、より反発感が強く、しっかり路面をとらえてくれる。その反面、更にエッジが尖ったフィーリングで、それと比較すれば、ボーラワンは、接地面積は広いがオブラートに包まれたフィーリング、と表現できる。
もう一つ書いておきたいのが、rovalのCL40。今ハンドリングが良いと評判のカーボンホイールを挙げるなら、これだろうが、確かにrovalはフィーリングが良い。このホイールはリムを強く押すとたわむし、スポークは丸スポークだが、恐らく、リム・ハブ・スポークの剛性バランスに優れているのだろう。クリンチャーであることを差し引いても、路面へ吸い付く感覚が強く、アルテグラのような、接地感が分かり易いホイールであった。
ほかにも手組のenveや各社の上級アルミリム等々とも比べたが、どうも接地感の面だけは、ほかの部分の性能が高いだけに、気になってしまった。
(2017/2/20追記;その後MAVICとも比較しました。こちらは前後輪とも比較した感想を記載しています)。
ただ、念のため追記しておくが、あくまでも感触であって、不安定さなどは全くない。狙ったラインにスッと入っていくし、上で挙げたホイールより更にもう一段スピードを出しても破綻しないので、その性能の高さに身体が追い付いていないだけの可能性もある。また、かなり軽量のため、そもそも前提として、意識してフロント荷重をかけないといけないとは思う。
(2017/4/6追記)
レースをいくつもこなし、様々なフォームを試したうえで、ボーラのフロントホイールは高剛性なため、しっかりフロントに荷重をかけないと接地感が得られないことが分かってきた。あまり後ろ乗りになりすぎず、かつレーススピードで下った時であれば、接地感は十分あることが分かった。全速度域でより接地感の強いホイールがある、と感じたことを踏まえると、ある意味、トッププロ向けの領域に焦点を当てた、プロ向けホイールと言えるのではないだろうか。
また、ホイールの接地感を増すための工夫についての記事を近日公開予定です→公開しました。
<リアホイール>
リアホイールは文句なしの高性能。G3特有の、トルクをかけると進む感じはそのままに、軽快感が更に強くなっている。
少なくともMega G3になる前のユーラスは、レースで、短時間高強度域のパワーが求められる、勾配のきつい急坂で、もう少し進んでほしい、という場面があったが、ボーラはその領域でもサクッと進んで、しかも脚への負荷は少ない。もちろん平地の力強さはそのままである。
そして、アルミスポークであるユーラスと比べると、パリッとした乾いた感触で、反発力が心地よい。剛性が上がったことで、いわゆるタメが無くなり、低速から高速まできれいに加速していく。でも、他社のホイールと比べると、G3らしい、ぐっと伸びていくフィーリングはわずかに残っている。 スプリントもかかりが良く、気持ちが良い。
そしてリムの硬さなのか、路面の荒れに屈しない強さがあり、きれいに丸い輪が回っていく感触である。どんな場面でも、脚にやさしいのに力強く進んでいく感触は、言い換えればギザギザのデジタルデータ(=路面抵抗・路面のうねり)を近似して滑らかにしたようなイメージでもある。
<ブレーキ編>
今回のボーラのリムの最大の特徴は、先代ボーラ35から始まった3Diamant処理だろうが、確かに均一なブレーキ感で、パットの食いつきもよく、雨でも怖くない。カーボンリムはブレーキが利かない、とかブレーキが怖い、というのはこのボーラには当てはまらないと思う。
<整備編>
カンパホイールのメリットとしては、整備のしやすさが挙げられるだろう。今回のボーラは、ニップル回しとスポーク押さえ、そして、ニップル交換用磁石を自分で購入する必要はあるものの、引き続きスポーク交換や振れ取りを自分ですることが可能なため、落車等で壊しても、すぐ直すことが出来る。アンチスポークローテーションシステムのせいで、スポーク交換の際、ハブを開ける必要はあるが、スペアパーツとしてスポークを簡単に購入できる点の方を評価したい。
なお、ハブは相変わらずの高性能で、雨の中を走っても、そう簡単にはグリスが流れない。ただ、リアは、どうしてもフリー側から汚れが入ってしまうので、定期的に整備したい。
<結論>
最初にも書いたが、G3らしい、味わい深いフィーリングがあるので、これしかない、というホイールに仕上がっている。新型のボーラウルトラ35は乗っていないが、恐らく、常用できる決戦用カーボンホイールとしては、相変わらず頂点に位置するホイールの一つなのではないだろうか。
※2018/3/19:”Fulcrum Racing Light XLR”のインプレを掲載しました。
※2019/1/1: "MAVIC Ksyrium Pro Carbon SL UST"のインプレを掲載しました。
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