徹底比較:LOOK KEO Blade vs Time Xpresso vs Time Xpro (2020/1/12、2/4追記)

<関連記事>
特集:冬の膝痛対策③ - シューズに関する考察、ペダル考①
特集:冬の膝痛対策④ - ペダル考②;スピードプレイ インプレ
特集:冬の膝痛対策⑤ - ペダル考③;タイムペダル インプレ①
特集:冬の膝痛対策⑥ - ペダル考④;タイムペダル インプレ②

【長ったらしい前書き】
僕は、数年前の腸脛靭帯炎の発症を契機に、ペダルにこだわるようになった。これまでシマノ(金属)を4年、シマノ(カーボン)を1週間、スピードプレイを半年、タイムを4年、ルックを1年使用した。結論として、耐久性だけだったらシマノが最強、しかし、より安定した踏み心地を求めるならルックかタイム、そして膝に不安があるならタイム(と一応スピードプレイ)と考えている。
これは同意してもらえるかわからないが、個人的にはシマノとタイム&ルックは別物のペダルに感じている。シマノに関しては105を3年、9100系デュラエースを1週間だけ使ったが、正直9100系ですら、確かに剛性はかなり高いが、安定感という意味ではなぜかルックやタイムに劣る感じがあるのだ。恐らくこの安定感というのはスペック上ではない、実際の接地面積や剛性バランスなどに起因するものだと思う。
そのような背景から本稿では、踏み心地という意味で似ていると個人的に思うルックを比較対象にしながらTimeの新作、Xproの良さを紹介したい。
但し、人に勧めるときはシマノを進める。年間約1万キロ走る僕の場合、ルックは半年強、タイムは1年で買い替えとなってしまう(もちろん、リペアパーツを購入したり分解整備して長持ちさせるという方法もあるが、細かいガタが気になってしまう)。一方でシマノの場合、カーボン化してからはどうなのかわからないが、少なくとも金属時代のシマノは3年でも全然問題なく、恐らくさらに数年使えただろうし、今のカーボン製のものも、各部の工作精度を見る限り、耐久性は比較にならないほど長いのではないだろうか。

【LOOK KEO Blade カーボン vs Time Xpresso 10】
まずは、LOOKとTimeの上級モデルを比較しながら、各メーカーの特徴をインプレしたい。
<重さ>
クロモリアクスルのKEOとXpresso10の実測重量を示す。それぞれ半年ほど使った状態である。
どちらもカタログ重量(Xpresso99g, KEO110g)とほぼ変わらないという意味では、優秀といえるだろう。

<ファーストインプレッション>
KEOはとにかく安定感を感じる。靴底が厚くなったような印象。そして、Xpressoから乗り換えると力が逃げない感じを受ける。
ペダル自体はそこまで大きくないのに不思議な感触だ。正直、これまで使ったペダルの中で、最も安定感が高く感じる。

一方でXpressoはフローティング機構のせいで、脚が安定しない感じがする。ただフローティングを固くするとそこまで違和感を感じない。

<長距離を走った時>
長距離を走ると両者の差が見えてくる。KEOの場合、力が逃げないためか、練習不足の状態で長距離を走った時、脚が攣ることが多いように感じた。長距離レースでは、しっかり練習して臨まないとかなり負担が大きい。しかし、力が逃げないので、安定してパワーを出すことができるし、短中距離のレースだと、アドバンテージになると感じる。

一方でXpressoは、極端な言い方をすると太ももが疲れにくい。知らないうちに力を逃がしてくれているのか、長距離後半まで脚が残る感触がある。但し、しっかりセッティングしないと膝に変な負担がかかる。同様に、ペダルが消耗した状態で使用すると、本来のセッティングと微妙にずれるせいか、ひざの痛みが出やすい気がした。

<スプリント>
一言でいうとKEOはトルクで勝負するスプリント、Xpressoは回転力で勝負するスプリントに向く気がする。KEOの場合強く踏み込んでも力が抜けないが、Xpressoの場合、少しでも踏む方向がぶれると力が外側に抜けてしまう。一方で、Xpressoの場合、脚の回転をサポートしてくれるため、回転数を上げやすい。そういった意味ではハイケイデンスのスプリントに向く気がする。 そのため、少なくとも僕の場合、KEOでスプリントすると1100w程度出るのにXpressoでスプリントすると990w位しか出ない。全く同じ条件で試したわけではないから、何とも言えないが、一つの現象として参考程度に聞き流して頂きたい。
どちらにせよ、プロが愛用している機材なので、どちらかじゃないと勝てない、という事は絶対にないと思う。

<耐久性>
これはどちらも悪い。KEOの場合は踏み面が削れてくるので、前述のように5000㎞程度で違和感を感じてくる。Xpressoも1万キロ程度で違和感を感じる。Xpressoの場合は踏み面を交換できるが、残念ながらKEOにせよXpressoにせよ、買った時から軸にガタがあることが多く、そしてそれが徐々にひどくなっていく影響もあり、買い替えたくなってくる。細かいことを気にしない選手ならもう少し持つかもしれないが、少なくとも僕の場合、膝をけがしてからは細かいセッティングの違いで痛みが出るようになってしまったので、買い替えざるを得ない。
なお、Xpressoに関しては、急に壊れるというマイナートラブルが多い印象だった。詳細は関連記事をご覧ください
ただ、その耐久性の低さをもってしても、使い続けたいフィーリングの良さがある。

【Xpresso vs Xpro】
色々書いたところで、今回の本命、Xproの登場。高級感のある金属製の箱に入ったXpresso(右)と違い、ただの箱になってしまったXpro(左)の外装は少し残念であるが、値段は変わらないので、ペダル自体にお金がかかっていると信じよう。
カタログ値(113g)とほぼ変わらないのは素晴らしい。Xpressoよりは重くなったもののKEOとほぼ同じ重さと考えれば悪くない。

<ファーストインプレッション>
第一印象は、安定感である。クリートがよりがっちりハマる感触があり、フローティングもやや重くなった。Xpressoの膝へのやさしさを維持したままKEOのような安定感を得た感じ。
Timeのフィーリングが好み、もしくは嫌いでなければ、これ以外ない、というフィーリングに仕上がっている。また、これまでTimeは不安定だから嫌い、と感じていた人にもお勧めできるフィーリングに仕上がっている。
また、このクリートのハマる感触というのは、クリートの形状の変更も関係していると思われる。
Xpressoの、左右入れ替えでQファクター変更というオプションはなくなってしまったものの、形状の変更でより確実に嵌合する形に変更されていることが分かる。
<巡行時・スプリント>
Xpressoとの違いを感じるのはやはりスプリントの時である。Xpressoはペダリングが乱れると、力が横に抜けることが多々あったが、フローティングが良い意味で渋くなったおかげでそのようなことが起こりにくくなり、しっかり踏み切れるように感じる。
一方で高速巡行の際もXpressoと比べて安定して踏みまわせ、またXpresso同様、ペダリングをアシストしてくれる独特の滑らかさがあり、そのうえでXpressoほど不安定な感じがないので、KEO Bladeやシマノに慣れている人も大きな違和感は感じないのではないかと思う。

<耐久性>
まだ使い始めて数週間なので、後日追記する予定だが、相変わらず、使い始めて数回目には軸のガタが出始めた。ただ、各部の工作精度は若干Xpressoより良い気がする。耐久性向上を期待しよう。

(2020/1/12追記)
Xproも2シーズンにわたり、計2つ使ったので耐久性に関して追記するが、Xpressoとほぼ変わらないか、やや向上した程度、というのが正直な印象である。ペダル自体もしっかり作ってはあるが、軸のガタは相変わらずなので、ある程度使うと買い替えたくなってくる印象。クリートに関しても削れてくるとやはり膝に負担がかかるというか、変な方向に力が入ってしまう印象。ただ、Xpressoの時にあったマイナートラブル的なものは一切ない。そういった意味ではXpresso以上にお勧めできるペダルだと感じている。

【決まり切った結論】
ペダルはタイムとそれ以外、といわれるが、Xproは相変わらず独特の、そして癖になるフィーリングを感じることができ、そのうえでこれまでのXpressoが持っていた、脚が固定されない不安定さを感じる場合があるという弱点を克服し、KEO Bladeの大きなアドバンテージであった”安定感”に近いものを手に入れることに成功している。
レース志向のTimeユーザーには強くお勧めできるし、これまで他社ペダルを使っていて膝に違和感を感じている人や、ペダリングがうまくできないと感じている人には、Xpresso以上に自信を持って勧めることができる。前回のiClickからXpressoへの進化の時もそうだったが、どうせ、更に新作が出たら、さらに弱点を克服していくのが常、言い換えればTimeペダルに関しては最新が最良であるといって良い気がするが、少なくともこの記事を書いている2018/2/25時点では最新作であるXproを絶賛して結論としたい(追記:2020/1/12時点でも絶賛しています笑)。

(2020/2/4 追記)
KEO Blade  2020年モデル(=2019年マイナーチェンジ版)のインプレをアップしました。

コメント