Fulcrum Racing Light XLR インプレ

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2019/1/1:現在最新鋭と考えられるロープロファイルホイール "MAVIC Ksyrium Pro Carbon SL UST"のインプレを掲載しました。

【ロープロファイルが熱い?】
僕が好きな選手の一人にダミアーノ・クネゴがいるが、クネゴの使用ホイールといえば、多くの場合ハイペロンかレーシングライトをチョイスしていなかっただろうか。ディープ化が進んだプロトンの中で、異質といえば異質。でも、冷静にクネゴは小型軽量タイプの選手なので、日本人にとって参考になるのではないか、とずっと感じていた。
近年、ホイールの高剛性化が進み、アマチュアレベルで本当に扱いきれるのか、という疑問があった。実際、僕自身、体重の問題か、どうしてもボーラで接地感の希薄さを感じていた。かといって、より高剛性なマビックだと、確かに接地感はあるが踏み切れない。
そんな中で、知り合いからほぼ新品に近いRacing Lightを格安で譲って頂く話が出て、二つ返事で手に入れたので、インプレしたい。
近年、キシリウム・プロカーボンの登場など、ロープロファイルリムが復権しつつある流れが多少ある気がするので、このタイミングで、カタログ落ちしたとはいえ、ロープロファイルの一つの最高傑作ともいえるレーシングライトを紹介したい。

【平地にて】
ロープロファイルホイールといえば、多くの人のイメージは平地で走らないのでは、というものではないだろうか。この予想を見事に裏切ってくれるのがレーシングライトである。ユーラスだと40㎞/h、ボーラだと45㎞/hくらいで巡行している場所で、しっかり45㎞/h出すことができる。恐らく、平地が走らないという印象は、フィーリングの問題もあるのではないだろうか。
確かにボーラは後ろから押される感じがあり、気持ちが良い。また、中速域での反応性が極めて良い。一方で、レーシングライトは太めのスポークをキンキンに張っているうえに、スポーク本数が多いので、きれいに回さないとスカスカ抜ける感じがある。さらに言えば、反応が良すぎて反応が悪いとでもいうのだろうか、硬いのでしっかり踏み込まないとアタックできない。ボーラのような、脚力の低さをカバーしてくれるような懐の深さがない。そのため、結果的に中高速域からさらにスピードを上げるとき、ボーラの方が一気に押し出される感触がある一方で、レーシングライトではワンテンポ遅れる感触がある。
また、意外かもしれないが、というよりレーシングライトがリムもハブもスポークもがちがちに作ってあるせいか、乗り心地はあまりよくない。スポーク本数のせいもあるのか、突き上げはかなりあるので、むしろボーラ35の方が乗り心地が良いのではないか、というくらい。でも、リムハイトが低いおかげか、路面がより近く感じられ、フィーリングは極めて良い。さらに、跳ねてもディープリムほど硬くないお陰か、荷重が抜ける感じはなく、そういった意味での安心感は高い。
ただ一つ加えると、以上で述べた印象はCULTベアリングのお陰もあるのかもしれない。僕自身が所有するボーラはワンなのでUSBだが、脚を止めた時の進み具合がUSBより良い気がする。ユーラスのノーマルベアリングとボーラワンのUSBの違いは全然感じなかったが、USBとCULTではやっぱり違う気がする。こうなると、平地順行性能を考えた時、ボーラウルトラと比べたらちょっと分が悪い可能性は否定できない。

【登りにて】
意外かもしれないが、 35㎜ハイトのホイールに比べてそこまで大きなアドバンテージは感じなかった。低速域の反応がやや良いことで、急こう配ではボーラより進む気がする。ここの性能は、メガG3になる前のユーラス(2011年モデル)とメガG3になった後のボーラ(2015年モデル)では、一番差を感じる部分だが、レーシングライトとメガG3になったボーラでは多少レーシングライトが良いという程度で、一人で走る分には気持ち良く感じたが、レースではそこまでアドバンテージを感じなかった。
一方、緩斜面では、比較対象であるボーラの特性もあるだろうが、めちゃくちゃ楽になるというわけでもないし、そもそも急こう配が続くレースというのはそこまで多くないので、総合的に、登りのためにロープロファイルを選ぶ、という必要はなくなった気がする。ただ、登りの性能のためにロープロファイルは選択肢から外したほうが良い、というわけではもちろんない。

【下り】
下りの接地感は最高。安心感が違う。チューブラーでチューブレス並みに安心して下れたのは初めてである。もちろんボーラも、接地感が低いといいつつも、行きたい方向にしっかり行ってくれ、ニュートラルステアなのでテクニックがあれば問題ない。ただ同じニュートラルステアでも、コンマ数秒後にホイールがどこにいるかあらかじめわかりやすいのがレーシングライトである。すなわち別の言い方をすると、プロ並みのテクニックがなくても、ホイールが補ってくれることでしっかり攻められるのがロープロファイルホイールだといえるだろう。

【設計が古いのは玉に瑕】
どうしても設計年次の古さは気になってしまう。まずタイヤをはめるとき、最近のリムは溝があって、タイヤが簡単に外れないようになっている(貼り付け精度を上げる?)が、そのような工夫がない点で時代を感じる。
次にリム。少なくとも3Diamant加工してあるリムは(ボーラは)お世辞抜きでアルミリムよりブレーキが利くと個人的には感じている。しかし、レーシングライトは最新のカンパ純正シュー=相性が良い上にカーボン用としてはかなりハイレベルのシューを使ったうえで、ドライでアルミと同等レベルかやや落ちるレベルなので、ウェットは少し心配である。
また、アンチスポークローテーションシステムがない。僕自身が譲って頂いた個体は、一回だけクリテリウムを走った後放置されていたものだったのだが、一部のスポークがねじれた状態だった。

【CULTの正当な評価はまた次の機会に】
上でCULTベアリングを褒めたが、少しだけ気になる点があった。これは新品のボーラ(USB)でも感じたが、グリスアップして(CULTに関しては高性能オイルを入れて)、玉当たりの調整をかなりしっかりやっても、ゴリゴリ感が残るのだ。参考までにだが、USBにはフィニッシュラインのCeramic Grease、CULTにはフィニッシュラインのCeramic Wet Chain Lubeを使っている。これが個体差なのか、既に使用されていた影響なのかは、新品状態で考えないといけないので不明であるが、少なくとも、使っているうちにゴリゴリ感が出てくる可能性がある、という点には注意が必要だろう。
なお、ハブに関しては、ボーラと違い、シールが外しにくくなっているので、汚れへの強さはやや上ではないだろうか。

【長距離後半には注意】
ロープロファイル=柔らかい、というイメージはレーシングライトには通用しない。むしろボーラよりもガチガチに感じる。実際、レースで使うとボーラ以上に脚に来ている気がする。というより、しっかり踏み込まないといけないので、トレーニングを積み上げたうえで無駄脚を使わないように注意する、という当たり前(といいつつ実際にやるのは難しい)のことを当たり前のように行ったうえで使用する必要があるだろう(自分への戒め笑)。

【総括と称した長ったらしい主観的文章】
 脚力があって体重があってウルトラディープを使える人であればロープロファイルをわざわざ選択する必要はないだろう。また、35㎜くらいのミディアムプロファイルの方が平地では進む感じがするし、登りでもほぼ差がないので、わざわざロープロファイルを選ぶ必要が減った理由もわかった。だからカンパ・フルクラムがハイペロンやレーシングライトを、またシマノがデュラエースC24TUをカタログ落ちさせた理由を改めて実感した。しかし、この扱いやすさ、切れ味はクセになる。キシリウム・プロカーボンのような新世代のロープロファイルホイールは空力面も進化しているだろうし、選択肢の一つとして挙げても良いのではないだろうか。
そして一方で、プロトンで使われているホイールが、2018年現在40㎜前後と60㎜前後に収束しつつある理由も何となく感じることができた。今のミディアムプロファイルリムは登るし、ロープロファイル程とは言わないが、扱いやすい。さらに言えば、僕が所有するほぼファーストロットに近いと思われる2015年モデルボーラで接地感の事を何度も述べているが、時代はカーボンクリンチャー・チューブレスに移行しつつある。すなわちリムの高剛性化とタイヤのハイグリップ化が進み、恐らく接地感は年々改善しているのではないかと思う。そうなると、ロープロファイルのメリットはさらに薄まってくる。他方、ディープは反応性を犠牲にしないようにしながら平地での性能に特化しようと思ったら、80㎜や90㎜といった極端なリムハイトではなく60㎜程度に収まってくるのではないか、と想像する。こうなってくると、出来るだけオールラウンドなホイールが求められるであろうプロの世界では、ロープロファイルが出ていく幕はないのかもしれない。

色々書いたが、そもそも好きな機材が使えることがアマチュアの特権であるし、ある一定レベル以上の機材だったら機材の性能差がレース結果に影響を与えるという事はほとんど誤差の範囲だと思う。そう考えると、フィーリングを理由にロープロファイルを選択肢に挙げることは悪くない選択ではないかと強く感じた。もちろん僕自身の主観・体型の問題がかなり入っているが笑

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