S-Works Turbo RapidAir Tubeless Ready インプレ (8/1、8/7、8/29追記)

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今年は新年早々から自転車ネタが続いているが、更に自転車ネタを。今話題のチューブレスタイヤであるS-Works Turbo RapidAir Tubeless Readyを導入したのでインプレ。チューブレス歴9年近くになるので、宣伝文句に騙されず、冷静なインプレに努めたい。



[取り付けやすさ]
今回、諸事情でショップに任せたため、外す際に追記したい。
ショップ店員の話によると、MAVICとの相性はまずますというところで、出来ればタイヤレバーがあった方が良いかもとのことだった。

→(8/1追記)外す際にもタイヤレバーが必要だったので、割と固めだがはめられなくはない、という部類だと思います。過去にキシリウムプロカーボンUSTで唯一はめるのを断念したのがGP5000TLだったが、それよりは楽だが、一方でMAVIC純正と比べると明らかにはめにくい、といった感じです。
ちなみにリムの嵌合に関しては過去トップレベルの精度の高さで空気を抜いても完全にリムと密着した状態でした。ビートを外すのにとても力が必要なレベルでした。タイヤによっては空気を抜いただけでビートが外れるので、そういった意味では信頼性がとても高いタイヤだと感じます(記事後半の8/7追記部も併せてご覧ください)。
→(8/29追記)ネットで見る限り、他のホイールとの組み合わせでも”外れない”という症状が出る方がいるようです。僕自身は、記事後半に書いたように千枚通しを貫通させてテコの原理で強い力をかけて外しましたが、どちらにせよ、タイヤに強い力をかける工夫が必要そうです。ちなみに、千枚通しはリムへダメージを加える可能性があるので、あまりお勧めできないです。脚で踏んで外した、という方も見かけたので、もしかしたらよい方法かもしれないと思いました。

[ファーストインプレッション]
このタイヤは華々しい宣伝文句であるが、確かにカタログスペック上も26Cで約260gと悪くはない。直前まで使っていたタイヤがIRC Formula pro tubeless Lightであったが、カタログスペックではむしろこっちの方が軽い(チューブレスレディだから当然ではあるが)。
グリップ力は手で触った感じではS-worksの方が高そう。以前使っていたRBCCであればよい勝負だったかもしれない。

走り始めではエアボリュームの多さを感じる。決して重いわけではないが、軽いわけでもない。以前の23C時代の軽量クリンチャーと比べると踏みだしはどうしても重く感じる。25Cの各社チューブレスと比べるとほぼ変わらない感じ。重量の軽さがグリップの高さでトレードオフになっているか、もしくはシーラントの影響だろう。
グリップ力は確かに相当高い。初めてのライドの時、ウェットコンディションだったのだが、グレーチングなどの滑りやすい場所でも、もちろん一瞬滑るのだが、荷重をかけるとぐっと止まって、決して滑り続けない。これは公道ロードレースでかなり強い武器になりそうだ。
乗り心地に関しては、推奨空気圧のスイートスポットが6-7barと狭い割にはそこまでシビアでない印象。体重57㎏なので、フロント6barリア6.2barで試してみたのだが、振動がしっかり減衰するので硬さは気にならない。ゴムがそこまで厚くない印象といえばよいだろうか。
転がり抵抗に関しては、最初はよく分からなかったのだが、平地でスピードを出すと、ちょっとびっくりした。30km/hくらいまではタイヤ自体の重さとか、グリップの高さとのトレードオフなのか、めちゃくちゃ軽いという印象はないが、だんだん軽くなってきて、40㎞/hを超える領域だと、なぜかスピードが伸びる気がする。使っているホイールがキシリウム プロ カーボン USTだから別に25Cが26Cになったからと言って、ホイールとのマッチングはそこまで変わらないはずだし、そういった意味では空力的には逆に不利なはず。それなのにかなりスピードが伸びるのは転がり抵抗の少なさの恩恵なのだろう。これまで感じたことのないような感触であった。
そして、26Cでエアボリュームが多いことの影響もあるだろうが、スプリントでも横に滑らず、グイっとトラクションがかかる。確かにこれは良い。

IRCにせよMAVICにせよ、各社の最新のチューブレスタイヤはかなりレベルが高いので、正直、頭一つ抜けているとは思わない。性能的には各社のトップモデルとほぼ横並びかわずかにレベルが高い、という程度で、華々しい宣伝文句ほどではないと思う。でも、値段も含めたトータルの評価では、現在最もおススメできるタイヤの一つだと感じた。(8/1追記;下記長期使用レポートをご参照ください)

[続編]
1か月数百キロ程度使ったセカンドインプレッションを。やはり印象に残るのはグリップの高さ。いつものコーナーでの安心感が一ランクアップした感じがする。加えてグループライドでもコーナーでの安定感が違うように感じる。
一方で、重さは若干感じる。もちろん23Cなどの軽量タイヤと比べたらの話で、25Cと比べると標準的、もしくは僕の基準がIRCやハッチンソンといった軽めのタイヤなので、ハイレベルなグループの中で標準的、と考えて頂いた方が良いかもしれない。
タイヤ自体は中央がしなやかだがタイヤ全体としてはかなりしっかりしている印象。なので、乗り心地はかなり良く、コツコツ感はない。腰砕けにならない割にしなやかさもあるので不思議な感触。タイヤの構造から設計しなおした、といううたい文句だが、それが関係しているのかもしれない。
耐パンク性に関しては、現時点では何ともコメントできないが、コンパウンドが柔らかいためか、割と砂を拾う印象はある。別の言い方をすると、小石とかを跳ね飛ばす感じはあまりない。でもパンクはしていないし、シーラントも入っているので、特に問題は感じていない。
耐摩耗性は若干低いかもしれない。同じことを繰り返すが、コンパウンドが柔らかめだと思う。とはいえ、削れてもグリップは保たれているので問題は感じていない。この辺りは1年くらいじっくり使って評価したい。
現段階ではかなり気に入っており、リピートしたいタイヤの一つになっている。値段もとてつもなく高い、というわけではないので、総合的にはかなり気に入っている。

[長期使用レポート (8/1追記)]
半年弱1500km程度使用した段階でのレポート(あまり実走できず。。。)。まず、前輪に関しては、割とコンパウンドの削れ方が早い気がするが、グリップ力自体は保たれている。耐摩耗性はそこまで高くないが、ゴムの劣化は遅めの印象。
一方、後輪に関しては、割と深い傷が複数散見された。そして、案の定、パンク。シーラントが効いていたから大ごとにはならなかったが、走行後、家で放置していたら空気が抜ける音がして、気づいたら穴からシーラントが漏れていた。その後シーラントを追加したら空気の抜け事態は収まったが、5mm長の割と大きな傷からの空気漏れであったため、結局廃棄することにした。少なくともシーラントが効果的なタイヤということが分かり、決戦用として使う分には十分な品質だと感じる。しかし、耐摩耗性はかなり低く、後輪に関しては中央部が割とフラットに近くなっていたので、練習でもガンガン使うような使い方はお勧めできない。
僕自身は軽量級の選手のためか、普段パンクすることはほとんどないので、そういった意味ではパンクしやすいタイヤに分類できるように感じた。その辺のリスクを踏まえた上で高性能のタイヤを求めたい選手にはとても勧められると感じた。
なお、せっかく忌憚のない意見が書けるブログなので、遠慮せずに書かせて頂くと、現時点で、少なくともフィーリング・耐摩耗性・耐パンク性等々の観点から最も気に入っているタイヤはVittoria CORSA TLRである。チューブラーの時は固い感触があったが、Graphene 2.0へのアップデートのおかげかTLRのおかげか、固さが気にならなくなり、グリップ力もさらに上がった感じがある。重量が重いのが弱点だが、それ以外はかなり良い。ここ数年でチューブレスタイヤの選択肢はあまり増えていないがTLRの選択肢はだいぶ増えてきて、使ったことのないタイヤも増えてきた。他のタイヤも使ったうえで、またインプレ記事アップを検討したい。

(8/7追記)
前回の更新から1週間もたたないうちに、前輪も同様にパンク。知らないうちに穴が開いており、シーラントでふさがれていたが、その穴が外れた模様。パンクに弱いことはよく分かったので、少なくとも、このタイヤは決戦用として限られた条件下で(例えば新品に近い状態で、路面がきれいなコースで)使うことをお勧めしたい。
そして、もう一点困ったのが、最初の項目にも追記した通り、リムとの密着度が高すぎる事。もちろん、それ自体は良い事なのだが、どうもスペシャ純正のシーラントがやや粘着力を持っているようで、結局リムとタイヤが完全に固着してしまっており、外すのがかなり困難を極めた。しょうがないのでペンチでタイヤを切ったが、それでもビートの部分が剥がせず、結局タイヤに千枚通しを貫通させ、てこの原理で思いっきり力をかけて剥がした。かなり注意して行ったものの、若干リムにダメージを加えてしまった。まあ、ビートフックにはダメージを与えていないので問題はないが。
リムとの相性の良さはとても分かったので、使うシーラントの種類はよく考えたほうが良いかもしれない。また、この現象はたまたまかもしれないので、少なくともスペシャ純正品を批判する意図はない。このような可能性がある、程度に読んでいただければ幸いである。さらに言えば、これだけ密着させられるということはシーラント自体の性能も高い、ということだろう。使い勝手の問題から、練習からレースまで使うとなると、別のタイヤを選択したいとは思うが、決戦用タイヤとして強く勧められるタイヤ、という考えは変わりない。

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