皆様、今年もよろしくお願いします。
新年第1弾は、例によって自転車ネタ。昨年導入してじっくり使ったパーツのうちで、最も紹介したいと思ったパーツである、マビック キシリウム プロ カーボン SL USTのインプレをお送りします。
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ユーラス考①
【ホイールについての要求事項】
最初に、僕がどういう選手で、ホイールに何を求めているかを述べたい。
僕自身は体重57㎏、一番強かった時でFTP5w/kg程度、インプレ時は4~4.2w/kg、マックスパワーは1000w程度である。すなわち、硬すぎるホイールは踏み切れないし、軽量級なので、軽すぎるホイールだと不安定になりすぎる。
ホイールが好きでいろいろなホイールを使ってきたが、最も自分に合うと思ったホイールがユーラスで、ボーラだと挙動が鋭すぎた(が決戦用として使っていた)。フレームの重さもあるかもしれないが、適度な重さがあって、できればロープロファイル、といったところか。
今回はユーラスの後継として、練習からレースまでオールラウンドに使える耐久性が高いホイールが欲しかった。そして、チューブレスが好きなので、最低限チューブレスレディである必要があった。そんな中で、以前使ったキシリウム プロカーボン SL クリンチャーに良い印象があったので、今回UST化を機に、購入に踏み切った。
【全体的な印象】
まず、気にする人が多いであろう、重量。タイヤ込みでフロント933g、リア1110gだった。タイヤが何gか分からないが、仮に300gとすると、ほぼ公称重量(1445g)通りといったところか。リムテープの交換時期が来たら、すべて剥がして計りたい。
*2021/7/4追記:何も装着していない状態のホイール重量(g)は652(F)+828(R)で、リムテープとバルブを合わせると15g程度であった。
ホイールのつくり自体は質実剛健。リムもしっかりしているが、特にスポークがしっかりしている。ステンレスでかつ太く、見た目はアルミスポークのよう。そのうえでステンレスの安心感もあるので、この部分を極限まで削り、細身のスポークをキンキンのテンションで張っているボーラとは、目指している方向性の違いを感じる。
走り始めでは、意外とリムが軽いと感じる。公称値ではアルミのキシリウム プロ USTが総重量1410g、リム重量400gでカーボンのキシリウム プロ カーボン SL USTが総重量1445g(HPの一部には1390gの記載も見られるが)、リム重量390gとなっているが、スポーク本数を考えると、恐らく、リムはアルミのキシリウムより若干軽いのではないだろうか(以前クリンチャー同士を乗り比べた時の印象もそのような感じだった)。
もちろん、絶対値としてはチューブラーよりはだいぶ重いし、チューブレスタイヤであることも相まって、外周部は重いはずである。しかし、丁度スポークとリムの重量バランス、剛性バランスが良いというのが軽いという印象に寄与しているのだと思う。もちろん、これまでインプレしてきたレーシングライトやボーラもバランス自体は良いのだが、キシリウムは適度に重いことで、密度感というか、鋭すぎない扱いやすさがある。
さらにスピードを上げていくと、加速後半もホイールの存在を前後共に強く感じるのがカンパ系との大きな違いである。カンパ系のホイールだと、加速後半にフワッと伸びていくが、マビックは踏んだ分だけホイールが回っている感がある。これは、ハブのツメが多い影響やスポーク本数、そして組み方の影響ではないだろうか。
そして、フロントもカンパ系のカーボンホイールの場合、キンキンに張ってあるせいで、僕の体重では跳ねてしまうことがあるが、キシリウムの場合、スポークテンションが少し低めの影響とリムの密度というか衝撃減衰性の高さの影響か(カーボンが厚い?)、しっかり路面をとらえてくれる。ちなみにこれはユーラスでも感じているので、チューブレスタイヤの影響もあるのかもしれない。
結論的に言うと、限界まで性能を高めた鋭いホイールの中で扱いやすさを兼ね備えるのがボーラ、懐が深くて誰でも使える高性能ホイールがキシリウムカーボンといった感じだ(もちろん、厳密にはクリンチャー同士チューブラー同士で比べるべきではあるだろうか)。
【レース強度での印象】
普段のトレーニングでは分からない強度の領域でも、印象はほとんど変わらない。扱いやすくストレスがたまらないから走りやすいけど、性能的には最高峰じゃないから、もっと軽くて鋭い方が良いという人もいるだろう、といった感じ。ただ、脚が疲れていた時にスカスカ抜ける感じはなく、ホイールがしっかり回ってくれる。雑なペダリングをしても回ってくれる、といった感じか。
ただ、疲れた状態からのスプリントは全然かからない。 踏み切れない感じ。
また、脚の消耗もボーラより若干早い気がする。これはホイール重量の影響もある気がする。
あとは、スペックだけ見ると、アルミじゃダメなの、となってしまうのはつらい。正直、特にレースに頻繁に出る選手だとホイールの消耗が早いわけだから、アルミの方が簡単に買い替えられてよいのでは、となってしまうだろう。アルミより少し軽い、少し振動吸収・減衰性が良い、そして、マビック・カンパ系はアルミよりカーボンの方が少しブレーキが利く(エグザリットを除く)。この少しの差に投資できるかどうか、という感じで、ホイールの性能だけを追い求めたら、チューブラーの方が良いだろう(タイヤの性能的には圧倒的にチューブレス>チューブラーだと個人的には思っているが)。でも、もちろん、このわずかな性能の差は意味がないかと言ったらそんなことはなく、特に振動吸収性・減衰性の高さからくる良い意味でのマイルドさは、長距離を高強度で走るときかなり大きなメリットになるだろう。走る距離が長くなれば長くなるほど、強度が高くなればなるほど、このアルミとのわずかな差やチューブラーと比べた時の扱いやすさというメリットの意味が出てくるように思う。
【結論】
結論的に言うと、ホイール単独での性能的には
カーボンチューブラー>>カーボンチューブレス≧アルミチューブレスの最高級品
となってしまうと思う。すなわち、コスパ的には
アルミチューブレスの最高級品>カーボンチューブラー>>カーボンチューブレス
となるだろう、というのが現時点での僕の考えだ。しかし、走りの質感の高さ、見た目の良さといった所有欲の面も含めると、満足度はかなり高い。
さらに数年して、チューブレスタイヤの軽量化、リムのチューブレス化(チューブレスレディよりマビックの場合は剛性が上がるだろう)・軽量化が進んだ時、恐らく、カーボンチューブラーやアルミの最高級ホイールでは到達できない、圧倒的な高性能ホイールになる可能性があると感じた。2019年モデルから販売されるコスミックアルティメイトUSTなどは、その可能性を切り開くホイールの一つになるのではないかと思う。
キシリウム プロカーボン USTはコスパを考えるならお勧めしないが、バランスが良くて扱いやすい練習からレースまですべて使えるホイール、というぜいたくな要求を満たす一本としては、とても良いホイールだと思う。
【弱点(2019/5/9追記)】
上で述べた通り、僕自身は基本的にはキシリウムカーボンUSTに満足している。しかし、チューブレスレディという規格、USTというMavic独自規格に対して若干の不満を覚える面があるので、追記することとした。
まず、チューブレスレディについて。
残念ながら、シーラントを入れないと空気は抜けやすい。それは良いとして、やはり、タイヤ交換の際に、タイヤ内に大量のシーラントが残っているのは非常に作業しにくいものであった。これまで、ユーラスやデュラエース、アルテグラなど、完全にチューブレスのホイールしか使ったことがなかったので、シーラントを使うにしても少量だったため、このような問題に直面しなかったが、やはり20mLとか30mLという量を使うと、1年後にタイヤ交換をしようとした際に、結局ほとんどが液体のまま残っているので作業環境が汚れることを覚悟する必要がある。
そして、USTという規格がまた厄介である。完全に自己責任ではあるが、純正以外のタイヤをはめようとしたら、相当苦労させられた。まずGP5000 TLはタイヤレバーを総動員してもはまらず、チューブレス歴9年目にして初めて、はめるのを断念した(ただし、この時、リムテープも非純正品だったので、それも悪影響を及ぼした可能性もある)。そして、少し硬めではあるがはめやすいタイヤの一つであろうIRCのformula pro lightすら、少なくともユーラスやアルテグラと比べはめにくく、タイヤレバーを最大限活用した。
もちろん、純正タイヤはやや柔らか目ではあるものの、グリップ力・グリップ感ともに高く、性能のバランスが良いので、確かにそのまま使い続ければよい話ではある。とはいえ、機材を自由に変えられるのがロードバイクの楽しみの一つと考えると、少し寂しい話ではないだろうか。そして、万が一純正品の在庫がなかった時に困ってしまう。
ちなみにIRCのformula pro lightにすると、若干乗り味が固くなるし、グリップ力も落ちるが、走りの軽さは乗った瞬間にすぐわかる。ロードレースでどちらが良いかとなると難しい問題ではあるが、アップダウンが多く、かつテクニカルではない場合は純正よりメリットが大きいと思うので、そういったチューニングの楽しみの余地は残してほしと感じてしまった。
コメント
当方、ロードを初めてまだ3年目の43歳です。180cmの72kgです。2018年9月に地元のロード専門店でCannodaleのSynapse Carbon 105 Disc を購入し、乗れていないなりにもいろんなところに行った1年後の昨年、Mavic Ksyrium Pro Carbon SL UST Disc 2019 を購入しました。ライバルに名を連ねたのは、同じくMavicのコスカボ、名門カンパのBORA ONE 35 です。
ですので、Tomoさんのこの記述を興味深く拝見しました。2020年7月現在、このホイールを8ヶ月(と言っても、ここは雪国なので12月から3月はライドできません。)、距離にして1,300km、獲得高度で10,000mほどです。現時点での感想は、軽い・最高速度は思ったほどではありませんが以前の鉄下駄よりはスピードが乗る(平地、無風だと頑張って35〜40km/hくらいを30分ほどです)こととともに、このホイールの利点は静粛性(35km/hくらいの巡航状態だと風切り音はほぼせずに、アスファルトからタイヤを介してリムから発生する(?)”コーーー”という音だけです。)と良好な減衰性が良好(おそらく、空気圧が以前の7〜8barから MY MAVIC アプリの推奨でフロントで5.0bar、リヤで5.5barほどで乗れるからだと思うのです。)なことが挙げられます。
思い出に残るエピソードが一つありまして、このホイールを装着して初めてのクラブライドで、シーラントを填入したチューブレスタイヤでありながら、使用初日に前後ともにパンクさせてしまったことです・・・。集団走行の技能が不足していたことが一番の理由ですが、自分としてはまさかこのタイヤでパンク(しかも2輪とも同時に!!)することがあるとは思いもしていませんでしたので、なかなか思い出深い1日となりました。
総合して、やや値は張りますが大人の趣味としては清水の舞台から降りるつもりで買っても大きな後悔はないであろう、いわゆる逸品だと思っています。
以上、突然お邪魔しました。今後ともよろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。前後輪パンクは災難でしたね。
おっしゃる通りでロープロファイルということもあり、最高速度がとても上がる、というような感じはしない地味な商品ではありますが、バランスが取れた逸品ですよね。
キシリウムによって日々のライドがより充実されることを祈っております。
この度は実際に使われている生の声を聞かせて頂き、ありがとうございました。
この度はご丁寧な返信、ありがとうございます。
少しびっくりして、それ以上に嬉しくて、他の記事もいろいろ拝読しました。その内容を拝見して、今更ながら自分などがコメントしてしまったことについては後悔先に立たず、でした・・。
でも、こうやって色々な方の情報をいただける現代に感謝したいと思います。重ねてこの度はありがとうございました。